中国あれこれ  その4  食べる事への情熱(注文篇)

 

まず最初に、街の食堂での「飯の食べ方」からです。

中国の大衆食堂での「飯の食べ方」、基本的にはパリのレストランと同じです。

え?「パリに行った事がない」ですって?

ほいじゃまあ、青年時代にパリに2週間ほど一人旅していた岡崎が説明します。

パリにゴマンとある小さなレストランに入る、するとマネージャがやって来て、何やらフランス語で聞いてきます。彼は別にあなたの国籍やパスポートの有無を訊ねるワケではなく、ましてや哲学的、経済的な質問をあなたに聞くわけでもなく、ましてはあなたの連れとあなたとの関係に

興味があるワケでもありません。

知りたいのは唯一点「お客さんは何人ですか?」つー事。ですから、何も喋る必要はありません。

微笑みながら(嫌なら、ブスッとしながら)指を1本(または2本)立てればよろしい。

すると、いかにも「どうぞこちらのテーブルへ」という旨のジャスチャーをして案内してくれ

ますから、着席すれば可。その際、「メルシー」の一言があれば、尚よろしい。

しばらくして、注文を取りに来ます。相手が何かしゃべりますから、慇懃無礼にその発言の腰を折って、(折らずに数秒間待って、最後まで言わせてもバチは当らない。)ゆっくりとフランス語

で、ヴァンブローン(BLANC)か、ヴァン ルージュ(ROUGUE)のどちらかを注文する事、何の事はない、ワインの白か赤かを言うだけ。

岡崎はいつも白でした。

この次は、チーズなどのオードブル(前菜)から始まってスープ、メインディシュ、食後のスイートの注文ですが、これらはアアタ、ちゃんと紙に書いてありますがな。親からもらった手についている指で、注文します。最初に示した地点が銘柄、次に相手に向けた指の本数が、注文の品

数です。(保育園児にも出来るワザです)

唯一必要なのは「時間と食事を楽しむ」つー1点です。レストランでは、オードブルが終わるのを確認してから、次のオーダーを作り始めますから、普通の食事で1時間、しっかり楽しめば2時間位はかかりますから、日本のファミレスの感覚で「注文が遅い!」などとは間違っても言っ

てはイケマセン。

じゃあ、その間一体何をしているか?「楽しい会話」これです。日本人男性には一番苦手な事か

もしれませんが、かの地の男性は老若を問わずに出来てます。(^^;)

そして、楽しい時間が過ぎて「勘定」ですが、これも実に簡単、「ラディション シルヴプレ」この一言でテーブル係が飛んで来ます。しかも伝票を持っていますから、その金額を目で確かめ

て、それにチップ15%位をオンして支払うだけ。

この2時間で、しゃべった仏語は2つ、“ヴァンブローン”と“ラデション シルブプレ”

たったこれだけで、私は毎晩フランス料理を楽しんでました。(^^;)

以上、長い枕話の次は中国での食堂での注文方法です。

私が中国での大衆食堂をお勧めするのは、値段つーか価格に関しては実にいい加減な中国で、食堂のメニューの料金に関しては完全に中国人と平等だつー点です。(国営市営私営を問わず、土

産物店を始めとする一般の売店と違う)。

ここでもちゃんとメニュー(菜単・ツアイタン)がありますから、親からもらった・・・を使え

ばよろしい。(^^:)

で、十分食べた後、「お勘定」という、結(貝長)チエチャンjie2zhang4つーので

すが、この発音がちょっとやそっとでは出来ない発音なのですがね。

ほいじゃどーするか?岡崎のネットワークフレンドで、前ハルビン医科大学日本語科の加藤先生のやり方が一番です。先生してる位ですから、勿論中国語が充分使える氏ですが、一通り食べて「じゃあ、帰りますか」という段になると、突然スックと立ち上がって一言「チェチャン!」

と怒るように叫ぶのですねえ。

この動作で100%相手は飛んで来ます。そりゃあそうです、客が立ち上がれば帰るという意志

表示ですから、ここで放っておけば代金を取りはぐれますからね。

岡崎も以後何度もこの「スックと立ち上がり叫ぶ」作戦をやりましたが、いつも成功です。そのうち「勘定!」とか「ごっそーサン」だとか「いくらあ!」などと叫んでも結果は同じでした。

(^^;)

いやあ、「すこしのことにも、先達はあらまほし事なり」(徒然草第52段)でありますねえ。

(^^;)

ちと長くなりますが、中国人の食べ物に対する情熱。

この点に関して、一つのエピソード(実話)を披露して終わりたいと思います。

場所はハルビン、連れは前述の加藤ご夫妻。ハルビン医科大学近辺では餃子が一番美

味いと夫妻が言う食堂(街食堂ですから、20人も入れば満員御礼)で、夫妻がお勧めの

餃子(焼餃子は中国では殆んど食べません。水餃子です。)を食しました。これが、まあ

皮はしっかり、その中にスープが入っていて、まあ、美味い美味い。水代わりのビールも1本5元(75円)ですから、20元(300円)あればビール2本と1斤(500グラム)のメチャ

美味い餃子(大抵の日本人ならこの1皿だけで1食分。)を賞味できます。

加藤夫妻と楽しく喋って居った時、奥の調理場の方からお下げ髪にノーメイクの背の高い女性が

出てきて、経営者のオババと二言三言声を交わしておりました。

「あれは?」と訊ねたら、「この店の餃子名人ですよ。」との事。

そうです、スッピンのかっての青年団副団長みた(漱石的表現)女性が、餃子の鉄人なのであ

りました。

しかも、ここのオババはなかなかに鋭くて(この点祇園の女将と同じ。え?小生も一度だけ祇園の小料理屋へ行った事があるのですよ。)、ある時、メインの料理長を交代させた直後、加藤ご夫

妻が食事をするのをジット見ていたつーのですよ。

食べ終わった夫妻に、「美味しかったか?」と訊ねたそうです。

ご夫妻は、「ええ、美味しかったですよ。」と返事した所、「それは嘘じゃ!本当に美味しければ、

あんなに速く食べられるワケがない!」と喝破したつーのですね。

中国人は今でも、「有名だから」とか「店がキレイだから」などという本質を外れた理由では金を払いません。その点は実にシビアでありますから、日本のラーメン店みたいに行列に並んで

見たケドさて?どこが美味いのかな?なんつー事は皆無です。

「美味くてナンボ」と考える人が13億人生きている国です。

これは中国では常識ですが、たとえば沙漠の中で建設プロジェクトを立ち上げる時、

宿舎よりも、事務所よりも何よりも最初に“建設”されるのが炊飯施設ですから。

余りにも美味しい米と水。その辺の野菜や魚をさっと洗って、タマには煮たり焼いたり

すれば充分な“食事”になった瑞穂の国JAPANと、草も肉も苦労して手当して、それを火力

と油とで料理しなければ「食事」にならなかった中国、風土の違いを感じますね。

 

 

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